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ハクレン→テイト
「それで、ミカゲが――」
あのな、テイト。
「けどそしたら、ミカゲの奴――」
いくら俺がそのドラゴンについて聞いたからって、好きな奴が他の男の話ばかりしてるのは、やはり辛いものがある。
「それで喧嘩になって大変だったんだ」
けど、それ以上に
「でもミカゲが折れてくれてすぐに仲直りできたんだ!」
「それは良かったな、テイト」
幸せそうな顔を見ていると、俺まで暖かな気持ちになってしまう。
「しかし、ホントに仲が良かったんだな」
本当は俺がそんな顔をさせてやりたいが
「あぁ!俺の最高の親友だからな!」
この笑顔が何よりも好きだから、つまらない嫉妬なんてどこかへやって
もっと広い心でテイトを包めたら――
…いいのだが。
やはり少し辛いものだ。
フラウ→テイト
なんだか寝付けなくて
寝ているカペラを起さないよう、そっと毛布から抜け出して
俺はフラウと一緒に見張りをしていた。
なんとなく他愛もないような話をしていて、ふと
向かいに座っているフラウの肩に糸くずが付いてるのに気がついた。
俺は何の他意もなく、フラウに手を伸ばした。
糸くずを取って、「ゴミ、ついてたぞ」と指摘しながら離れようとしたら
ゴミを摘んでいた方の手首を?まれて引き寄せられた。
そしてフラウと今までないくらいの距離になった。
唇には柔らかく、冷たい感触があった。
それがフラウの唇だと気付くのにそう時間は掛からず
すぐに離れようと頭を引いた。
「な、なんで・・・」
俺は咄嗟にフラウの手を振り払って、フラウから逃げるようにしてカペラの眠る毛布に戻った。
「"何で"・・・か。口付けの意味くらい知ってるだろ、テイト?」
フラウが自嘲的に笑ったなんて知らず、俺は真っ赤になった顔を
寝惚け眼で「テイト兄ちゃん?」と声を掛けてくるカペラから隠すようにしてうずくまっていた。
アヤナミ×テイトin軍部
(あ、アヤナミの目すごくキレイ・・・)
じっと見つめるその目は少しだけ色素が薄くて、透き通っている瞳が凄くキレイだった。
普段こんな風に視線を交えることなんて無いから気付かなかった、なんて心の中だけで呟いて
もう少しだけこの沈黙に浸っていようと思った。
見つめるアヤナミの目の中には俺がいて、その俺の目の中にはアヤナミが映ってて、その中には・・・なんて延々と続く合わせ鏡のような世界を想像する。
俺を真っ直ぐに見つめるアヤナミの目は冷静で、何の色も含まない無表情なその瞳に耐え切れず、俺は口を開いた。
「アヤナミ」
「・・・・・・何だ」
「何で笑ってくれないんだよ」
「・・・何故、面白くも無いのに笑う必要がある?」
「だって、このままじゃいつまで経っても終わらねーだろ!睨めっこ!!」
ほっぺを引っ張っていた手を離す。
わずかに痛みの残る頬を摩りながら訴えても、アヤナミは伏し目がちに、はぁ、と大きくため息をつくだけだった。
何もしないアヤナミを見ても面白くないし、一生懸命変な顔をする俺を見てもアヤナミはちっとも笑ってくれない。
机越し、二人で見つめあい沈黙ばかりが続く。
(よし、次こそアヤナミを笑わせる!)
そんな決意を胸に、俺はまた彼の瞳を見つめ始めた―――
ヒュウガ×テイトin軍部
「ヒュウガは、キス・・・ってしたことあるのか?」
珍しく黙々と仕事をこなす姿を眺めながら、前に親友と交わした話題を思い返していたら
考えるよりも先に頭の中が口から出てきてしまった。
俺は何を言ってるんだ!なんて言った後になって顔がだんだん熱くなってくる。
ヒュウガはびっくりした顔でこっちを見てきたけど、しばらしくしたら前に向き直って何だか曖昧に返事をした。
「まぁ・・・そりゃあ、ねぇ」
「そ、そうだよなっ」
自分で質問した事なのに、答えた自分の声が裏返ってしまった事にまた恥ずかしくなる。
「・・・・・・テイト君は?」
「へっ?!」
「したことあるの?」
思いも寄らないヒュウガの質問返しに俺は、いや、その、としどろもどろな返事しか出来なかった。
その様子を見たヒュウガに、ないんだ、と指摘されて俺は更に真っ赤になった顔を落とす。
「じゃあ、する?」
「・・・、は?」
「キス」
一瞬、言われたことが分からなくてボーっとしていると、目の前のヒュウガの瞳がだんだんと近づいてきていることに気付いた。
驚いて反射的にぎゅっと目を瞑ったら、状況が見えなくて余計怖くなって・・・
いつ、とドキドキしていたら、目の前で小さく笑う声がした。
「じょーだん」
目を開けたら笑うヒュウガの顔があって
「本当にすると思った?」
「・・・テ、テメェ!!」
クスクスと楽しげに笑うヒュウガにからかうんじゃねぇっ!と言いかけると、今度は額に何か温かいものが触れた。
「騙してはないでしょ?」
得意気に笑うヒュウガの顔を、俺は暫く見ることが出来なかった――
アヤナミ×テイト←ヒュウガ(アヤテイ兄弟設定・現パロ)
「オレさ、テイト君のこと好きなんだよね。」
先程まで弄っていた携帯をテーブルに放り出し、目の前の人物がニコリと笑顔で言い放った。
携帯は開かれたまま、アイスコーヒーの氷がカランと音を立てる。
「・・・俺もヒュウガのこと好きだぞ?」
一拍遅れて放った言葉に、サングラス越しの眼が細められた気がした。
くすり、と笑いながら
そうじゃなくってさ、と笑うヒュウガ。
「テイト君、意味分かってないでしょ?」
「わ、分かって・・・」
「分かってないよね。」
俺の言葉を遮ったヒュウガの目は
「ヒュ、ウガ?」
笑ってなかった。
「じゃあ、さ。」
"質問を変えようか"
言うなりヒュウガは俺の顎を掬い上げる。
「キスしていい?」
「っえ?」
どくり、と心臓が
ぞくり、と背筋が
ふたつ一緒に震えた。
交叉する視線は、いつものように「冗談」と笑ってくれる雰囲気じゃない。
「ヒュ、ウ」
「そういう"好き"って話。」
友達感覚の好きなんて要らない。
like"好き"じゃなくて、love"愛"を頂戴?
「――ってな訳なんだけどさ〜?聞いてる?アヤたん。」
不意に解放されたと思ったら
ヒュウガは先程から開いてあった携帯を手に取り、語り掛ける。
"アヤたん"
その言葉に、俺は今の状況も忘れて声を上げた。
「あ、アヤ兄ぃ!?なん・・・っどうして・・・!」
ニィッと猫のように笑うヒュウガに、携帯を差し出される。
耳に当てた途端、聞えてくる馴染み深い声。
『今、何処にいる?』
「え、と・・・」
「駅前の喫茶店だよ〜」
戸惑いを隠せない俺に、ヒュウガが楽しそうに助言を口にする。
慌てて見上げた顔は、いつものように眼を細めてこの状況を楽しんでいる。
「テイト君、此処に来ることアヤたんに言った?」
「・・・それは・・・」
『そこで待っていろ』
短い言葉と共にプツリという音がやけに耳に響く。
通話の終了を告げる電子音が、何かのカウントダウンに聞えた。