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「アヤナミ様、美味しそうなサクランボをいただいたので、そろそろ一息つきませんか?」



日が大分傾いた頃、自分付きのまだ幼さを残した少年ベグライターことテイト=クラインが
控えめな、しかし有無を言わせぬ口調で提案してきた。



「…そうだな」



こんなときの彼は一歩も譲らないので、その提案を甘んじて受け入れることにした。



「すぐ準備しますので、少し待っててください!」



そういうと彼はフワリと微笑み、そそくさと隣の部屋に向かった。















「おまたせしました」



ほんのりと赤く熟した水々しいサクランボと、温かく湯気のたつ紅茶がデスクの上に置かれた。
出されたサクランボを一つ摘まむと、口内に独特の甘さと酸味が広がった。



「…どうかしたのか」



ふと視線をあげると、なにやら神妙な顔つきでサクランボの茎と自分を見つめる少年。



「…私の顔に何かついているのか?」


「いえ…」



何やら言いづらそうに視線を逸らし、口ごもる。
先を促すように黙っていると、意を決したのか真っ直ぐに私を見つめた。



「…あの、サクランボの茎を口のなかで結べる人って何が凄いのでしょうか?」



質問を理解するのに時間がかかり、しばらく黙っていると呆れられたと捉えたのか、少年がシュンとうなだれて言った。



「…っ、くだらない質問をして申し訳ありません…」


「別に構わない。急にどうした。」


「このサクランボ、ヒュウガ少佐からいただいたのですが、その時に少佐が…

『アヤたんって、口のなかで茎結べそうだよね。・・・できるできないが関係あるのかって?
 知らないの、テイトくん?できたら凄いんだよ〜。俺は結べるか試したことないけど、ちょっと自信あるから味わってみる?』

ってニコヤかに言われたんです…その時にコナツさんがヒュウガ少佐を探しにきたので結局聞けずじまいでしたが…」



…あのゴミをどう処分しようか…



「あの、それで、アヤナミ様は茎を結ぶことができるのでしょうか…?」



おずおずと尋ねる少年の問いに、粗大ゴミの始末よりもまずどう答えて教えるかを考えることにした。



一つの考えに至り彼を手招くと、小首をかしげながらも素直に私に近づいてきた。
絶対の信頼を寄せられているのは嬉しいものだ。



「教えて欲しいか?」



確認をとると、『はい』と瞳を輝かせて頷いたので、腕を掴んで引き寄せた。



「ほぇ、あの…?」



状況が分からずに混乱している彼の耳許で、私は低く囁いた。



「サクランボの茎を結べる者は、キスが上手いと言われている。」



その行為にか、それとも内容にか、顔全体を耳まで真っ赤に染めた少年に口付けた。
ふんわりとついばむようなものではなく、全てを絡みとるような深く激しいキスを。



力の抜けてしまった少年の身体を抱きしめて支えながら、私はもう一度耳許で囁いた。



「私は茎を結べると思うか?」















2007/8/19