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「フラウなんて大嫌い」



突然テイトがいい笑顔で言った。
いつも俺にそんな顔を見せないくせに。
笑いながら言った。


「カストルさんの方がマシだ!」


天使の顔した悪魔か、おまえは。








落ち込んでいると、カストルがニコニコしながらやってきた。

出たな、この腹黒美少女ヲタク眼鏡が。


「おや、いつもうるさい貴方が静かなのは珍しいですねぇ、フラウ?」


ふふふ、と嫌な笑みを口元に湛え奴は言う。


「テイト君はやっと私の魅力に気づいたようですね。悔しいですか?ふふ、惨めですねぇ」

「うるさい!どっか行け!」



追い払うように腕を振ると、カストルは笑いながら去っていった。
テイト、俺よりもあんなクソメガネがいいなんて、一体どうしちまったって言うんだ。



とぼとぼとラブの庭園へ向かう。アイツなら何か良い案をくれそうだと思ったからだ。
途中テイトの楽しそうな声がして、思わず足を止めてしまった。
どうやらラブと話しているらしい。

別にテイトが気になるわけではないが、邪魔するのは悪いだろうと思って茂みに隠れてじっと耳をすませてみた。


「テイトくん、僕とつきあわない?」


ずっこけるかと思った。


な、な、な、ラブは何を言ってるんだ!?
・・・・・まあ、いい。 テイトはラブのことを知り合いの優しいお兄さん的感情でしか見ていないからな。


「いいですよ」


そう、いいなんて言うはずが…ってテイト!!!??
今のは俺の聞き間違いか!?
聞き間違いじゃなきゃなんなんだ!?

勢いで思わず飛び出してしまった。
テイトが驚いたような顔をして振り返った。
しかしすぐに笑みを貼り付かせて言う。



「そんなとこで何してるんだ、フラウ?」

「……………なんでもねぇ」



他に言うべき言葉なんて見つからなかった。



「テイト…」

「何だよ?本当にどうかしたのか?なんか暗いぞ。」

心配してくれたのかテイトはのこのこと近づいてきた。


ああ、そうだ。
テイトはいつもと変わらないのに。
俺がおかしいだけなんだろうか。


「テイト、ラブとつきあうのか?」

「え?」

「・・・・さっき言ってただろ」

「聞いてたの?」

「おっとりした天然カップルだな」

「っ…!」


突然テイトが体を屈めた。
なんだ?
どうした?




「っく…ははははは!」


テイトは笑っていた。
目に涙まで溜めて。

俺を莫迦にしているのか?



「フラウ、お前変なコト知ってるくせに、知らないんだな」

「知らない?何がだ?」


憮然として聞き返すとテイトは悪戯っぽく笑んだ。
そして唇に人差し指をあてて言う。


「0時になったら教えてやるよ」




かわいかった…。
















時計が0時を知らせる。
ベッドの上に座っていると、カチャリ、とドアが開いた。
パジャマ姿のテイトが笑みを浮かべて立っている。

いつになく上機嫌だな。
テイトは眉を顰めている俺を見て、苦笑する。


「謎解きしてやるよ。エイプリルフールは終わったしさ」

「えいぷりるふーる?」


そう、とひとつ頷いてテイトは俺の隣に腰をおろした。


「フラウ、本当に知らないんだな」

「だからそう言ってるだろうが」

「怒るなよ。ちゃんと説明するからさ。あのな、4月1日のことをエイプリルフールって言うんだ。
 この日は嘘をついてもいい日なんだって。」

「嘘を、だと?」

「うん。騙されたほうが悪い日なんだって。4月ばかって言ってね」

「4月ばか…。ん?もしかして今日のラブとの会話は…」

「嘘だよ。ラブラドールさんと付き合うわけないじゃん」

「カストルを俺よりましだと言ったのも…」

「嘘に決まってるだろ。」



それじゃあ、あれは…。
あの「大嫌い」は…。

なんと言っていいかわからずテイトの顔を見る。
テイトは困ったように上目遣いをして、照れくさそうに笑った。



「・・・・嘘だよ。その逆」




思わず抱きしめてしまったのは、当たり前のことで。

据え膳目前で我慢できるか!
かわいすぎるんだおまえは!






「愛してる、テイト」


「・・・・・知ってる」


「さっきの言葉、口で言ってくれるか?」


「俺もフラウのこと・・・・」





――――――――好き―――















2007/4/1