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「…っく…っ…ひっく……」

初めてテイトが眠りながら泣いているのに気がついた日のことは忘れられない。

「…テイト?」

「…あ」

声をかけると泣き腫らした目で虚に俺をみて、俺に縋り付いてきた。

「ミカゲ…ごめん…本当にごめん…」

思っていた以上に細い腕に驚いて、人違いを訂正することもできずに…

気がつけば、ただ彼の背中を撫でていた。

その翡翠は俺を映してなどいなかったけれど…

彼が少しでも救われるならば

それでもいいと思ってしまったのだ…



『Sanctus』



「ごめん…ミカゲ…」

あれからどれだけの夜が過ぎただろうか…

ハクレンはテイトがうなされているのに気付く度に、テイトに声をかけるようになった。

テイトはハクレンを抱きしめたまま、ミカゲに謝罪をし続ける。

だからハクレンも何も言わずに、謝罪を聴き続けながら、優しく背中をなでてやる。

普段ならそうしているだけでテイトは落ち着きを取り戻して再び眠りにつくのだが、今日は違った。

「…ごめん…誓いなんか交わしたからだ…」

テイトが紡ぐのは今は亡き親友へ向けた懺悔…

だからハクレンは何も言わないと決めていた。何故なら、それはハクレンへ向けられたものではないからだ。しかし、

「俺の親友になんかならなければ…お前は…」

「ソイツはお前の親友になったことを後悔してなどいない」

つい口をついて出てしまった言葉を取り消すことはもはや出来ず。

強い調子で言った言葉は半分寝ていたようなテイトを夢から覚ますには十分だった。

「…ハ、ハクレン…?」

抱きしめていた手をゆるめ、テイトはハクレンの顔を確認するように見つめた。
そして、バツが悪そうに視線を逸らしてポツリと言った。

「…ごめん…ハクレン…」

「何がだ?」

「……間違えて…ごめん…」

しょんぼりとうなだれるテイトの腕を引いて、今度は自分の腕の中に収める。

「なっ、ハクレン!?」

うろたえるテイトを無視して、ハクレンはテイトの頭や背中を撫でる。

「なんでも一人で抱え込むな。」

ハクレンの落ち着いた声に、テイトは抵抗を止める。

「いくらでも弱音吐いていい。気が済むまで俺が聞いてやるから…」

「ハクレン…」

普段あんなに強がっているテイトの本当の弱さを見たとき、なにがなんでも守っ
てやりたいと思ったのだ。



「お前の隣には俺がいるってことを忘れるな…」



テイトの手が弱々しくハクレンの背中に回される。

「俺はもしお前といることでどんな危険に晒されても、俺はお前と戦友になったことを後悔などしない…」

背中に回された手の温もりを実感しながら、ハクレンは『ミカゲ』の代弁をする。

「それは『ミカゲ』も同じはずだ…」

テイトが『ミカゲ』に向けた言葉の答を返す。

本当はハクレンには答える資格などないけれど、『ミカゲ』と同じ立場になったハクレンにしか言えない言葉…



「だからお前も、もう自分を責めるのはやめろ…」



テイトが腕の中で、ゆっくりと頷いた。背中に回されたテイトのうでにに力がこ
もる。

「テイト…。泣いているのか?」

震える背中を撫でてやると、テイトが小さな声で言った。

「…ごめん。もう…少しだけ、このままで…」

ハクレンは溜息をついて、震える小さな背中を抱きしめた。

「お前の『ごめん』は聞き飽きたよ…」

俺の言葉が少しでもコイツの救いになればいい…






あぁ、神様お願いです


貴方の代わりをさせてください…


愛しい彼を救わない


貴方の代わりをさせてください…



---End---







飛白黒猫さまから頂きました。
ミカゲを失った苦しさに未だに囚われ続けるテイトとどうしても代わりにはなれないハクレンが切なくて・・・!
素敵な小説ありがとうございます!