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ピューッと冷たい風が吹き、奥村が体を震わせた。


「さみーっ!」


そんな分かりきったことを、身体を縮こませながらヘラッとした笑顔で告げる奥村に、勝呂は呆れを通り越して無性に腹が立った。
この寒い中手袋もせず、ただこすり合わせているだけの奥村の両手は赤く、勝呂がその掌を掴んでみると、やはり凍えるような冷たさだった。


「まったく・・・なんでこん真冬にお前は手袋せぇへんのや!!」


呆れを通り越して怒鳴る勝呂は「忘れたもんはしょうがねぇだろ」と不貞腐れる奥村に一つため息をこぼすと、己の手が外気に晒されるのもお構いなしに片方の手袋を外す。


「?かたっぽ貸してくれんの?」


白い息を吐きつつ「悪ぃな」と謝る奥村に対し、勝呂は暫しの逡巡ののち両方の手袋を外すと、彼に渡すことなくポケットにしまって奥村の両手を己の掌で包み込んだ。


「勝呂?」


先ほどまで勝呂の掌は手袋で温まっていたから暖かいといえば暖かいのだが・・・


「・・・・こうすれば少しは暖かいやろ」


訝しがる奥村に対し、耳朶を染めながら告げられる勝呂の小さな返答は彼の性格から考えると意外すぎるもので、奥村はキョトリと瞳を瞬く。


「・・・・文句があるなら離すで」


そんな彼の反応に照れ隠しからか悪態をつく勝呂の手は口に反して更に奥村の掌を強く包み込む。


「・・・・そうだな、あったけぇ」


勝呂の優しい気遣いに再びヘラリと笑った奥村の顔はまぶしいほど純粋な笑顔だった。










2012/2/3